茨城県自然博物館のホモハビリス   歯科医師 木村達哉
Homo Habilis 茨城県自然博物館ネーチャーミュージアム
ホモハビリスの化石骨が展示してありました。この化石骨に虫歯と歯周病のような痕跡があります。
OH-13はホモ・ハビリス
 この化石骨はOH-13と標本番号がついています。OH-13は死亡年齢13歳から15歳のホモ・ハビリスのメスであると考えられています。これは南アフリカ共和国のウイットウヲータースランド大学のフィリップ・トバイアス博士が、タンザニアのオルデュバイ遺跡出土の化石についての研究を出版していらい定着した考えになっています。
左下の異常な様子
 下顎の歯および歯槽骨は左側と右側で大きくちがう様相をしています。右側には特べつな事はなく健全な状態であったようにみえます。左側の第二大臼歯の近心舌側咬頭は破折してなくなっています。それに接する第一大臼歯の遠心辺縁隆線および隣接面部も破折しています。左側第一小臼歯から第二大臼歯までの頬側の歯頚部にう蝕らしき実質欠損がみられます。また同部の歯槽骨は病的に吸収されているような様相をしています。


仮説 私が思うに...。
 ある日、彼女は左側の下あごの歯を一部を失ってしまったのでしょう。 それは闘争か事故の結果かあるいは石まじりの食片をここで強くかんでしまったのかもしれません。 彼女はその後長い間にわたり痛み苦しんだはずです。 歯牙破折の痛みばかりでなく食べるたびにこの歯間に食片の圧入がおこるからです。 そして左側ではかめなく(かまなく)なっていった。 その結果彼女の口腔左側では自浄作用が低下してしまいます。 具体的には同部の歯のまわりに食かすが停滞し細菌が繁殖し歯垢の増加が現れるのです。 これによりう蝕(虫歯)と、歯周病が彼女の下顎左側にはびこってしまったのではないでしょうか。

オリジナルを実見して研究したトバイアス博士は
 その研究の中で「OH-13の下顎骨の左第2大臼歯には、虫歯のような損傷が認められるが、これが虫歯によるものか、あるいは化石化の過程等での破損によるものかは判断がつかない。」としています。ちなみにトバイアス博士は医者です。
これはレプリカ...。あなたのご近所の博物館に同じ物があるかも?
 ネーチャーミュージアムのこの化石骨はレプリカです。人類化石の研究で重要なのは、写真や文献や模型ではなくオリジナルを実見する事だそうです。私にはこの様相はどうしても「虫歯と歯周病」に見えてしまいます。私が歯医者だからでしょうか。私はどの歯医者もこの様相を「虫歯と歯周病」と診ると確信しています。あなたのご近所にある博物館にもこれと同じレプリカがあるかもしれません。もしご覧になりましたらこの件にかんするご意見などお聞かせください。
語句解説
本文中で使用した語句を解説いたします。

歯槽骨:歯の周りの歯を支える骨のことです。
咬頭:歯の山の部分です。谷の部分は裂溝といいます。
辺縁隆線:隣の歯に接する噛む面の際。隣の歯と高さが合わないと食片が歯と歯の間に圧入される原因になる。
隣接面:隣の歯に接する面。
歯頚部:歯茎との境目周辺。
骨吸収:骨は常に溶けること再生することを繰り返しています。このバランスが崩れて溶けるほうが多くなると骨はなくなるのです。
口腔内自浄作用:口の中の汚れ細菌などは、口を動かすことや食物を噛むことなどで粘膜や歯の表面から剥がれ落ちます。それを唾液をいっぱい出して飲み込むことで数が少なくなりきれいになります。野生動物はこの作用があるので虫歯にならないわけです。でも、調理した食事をする人間はこの作用だけでは汚れを流しきれないのです。そこで歯ブラシやその他の器具で口腔清掃をすることによって努力して口腔を清潔にたもたなければならないのです。
歯垢:プラックとかプラークとかもいわれる。細菌が繁殖し固まりになったものです。 その中には細菌が生み出した毒素や酸を多くふくみます。
このコンテンツが1998年11月28日の朝日新聞茨城版で紹介されました。
その新聞記事を見る。(約81KBのGIF画像です。)
自然博物館でホモハビリスの化石骨OH-13(レプリカ)が展示してありましたが、展示物は時々更新されるようです。記事の展示物が現在展示されているか、館の所有物かレンタル品かは不明です。ホモハビリス リンク茨城県自然博物館

 このページの製作にあたり茨城県自然博物館の国府田先生、群馬県立自然史博物館の楢崎先生に貴重なご意見資料をいただきました。

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