学校歯科検診 歯科医師 木村達哉 (平成14年4月)
school dental checkup
小学校の歯の検査ではどんなことをするの?


はじめに
 新学期は家庭訪問などいろんな行事がありますね。小学生のいる家庭ではなにかと大変です。学校の先生方もとてもおいそがしい季節です。学校歯科健診もこの六月末ごろまでににおこなわれます。私は岩井市のある小学校の学校歯科医をしています。ここでは「学校歯科健診」のことと「歯の健康診断結果のお知らせ」についておはなしします。

学校歯科健康診断の目的は二つあります。

スクリーニングとしての学校歯科健診
最近の学校歯科健診においては、虫歯の発見ばかりではなく生徒の歯肉、歯垢、顎関節の状態を0.1.2と三つの段階に評価します。0は健康な状態です。1は学校内での保健管理の対象者です。2はより詳しく医療を受ける必要があるかどうか、専門医の診査を要します。

学校行事としての健康診断
「学校指導要領」では、特別活動の学校行事の一つとして位置け教育活動として行うことを明示しています。健康診断は、できるだけ集中的、総合的、組織的に行い、健康診断を行う週を健康週間とするなど、児童生徒の健康に対する意識が全校的にまとめられるよう配慮されています。また、学級における保健指導や児童(生徒)活動に於ける係の活動や委員会の活動などの関連を図り、健康診断が効果的に行われるようにくふうされています。


健康診断票の様式と記載要領がかわって
 児童生徒健康診断票(歯口腔)の様式と記載要領は学校保健法の改正により、平成7年4月1日から変更になりました。次の三項目の欄についてはあらたに加わりました。たんに虫歯のけんさだけではなく口の中の病気と機能の異常を早期に発見することが盛り込まれています。

「歯列咬合顎関節」の欄

歯列の状態、咬合の状態、それに伴って生ずる顎関節の状態について、異常なし、定期的観察が必要、専門医(歯科医)による診断が必要、の3区分について、それぞれ0、1、2で記入する。

歯科医は健診のさいに上下歯列弓の形態、対咬合関係、下顎の開閉運動路などを観察します。顎関節については視診触診や関節雑音の有無などから診断します。たとえば前歯が1、2本対咬合関係が反対になっているような不正咬合は評価区分1になります。定期的観察が必要ということです。

学童期は乳歯と永久歯の交換時期ですから口腔内の状況はめまぐるしく変化します。私は適切な時期に的確な処置をするには3ヶ月に一度の定期検診が必要であると考えます。評価区分1でも歯科医を受診するようにしていただきたいとおもいます。

「歯垢の状態」の欄

歯垢の付着状態について、ほとんど付着なし、若干の付着あり、相当の付着がある、3区分について、それぞれ0、1、2で記入する。

歯垢はたべかすではなく歯の表面の雑菌の塊ですから時間が経つとねずみ算式に増えます。歯みがきをした直後から取り残しの細菌が増え始めるのです。

歯垢は歯石とはちがい歯ブラシで落とすことができます。つまり「歯垢がほとんど付着なし」ということはその人が歯ブラシをうまく使いこなして的確に歯の表面の細菌をとることができるということです。

この欄の評価は歯みがきのうまいへたの評価であるということができます。

「歯肉の状態」の欄

歯肉炎の発症は歯垢の付着とも関係深いものであるが、ここでは歯肉の炎症状態についてのみ診査して、異常なし、定期的観察が必要、専門医(歯科医)による診断が必要、の3区分について、それぞれ0、1、2で記入する。

多くの場合歯肉炎の原因は歯垢です。歯垢の状態と歯肉の状態の評価には相関があります。

評価区分1は歯肉に炎症があるが軽度です。家庭内でその人に的確に歯垢をとることやおやつなどの食事習慣に気を付けることを十分に注意指導することで改善されるものとおもわれます。

評価区分2については時に全身的な原因が潜んでいる場合もありますので是非とも歯科医の診断が必要です。

要観察歯(CO)について

要観察歯とは、探針を用いての触診ではう歯とは判定しにくいが初期病変の疑いのあるもの。小窩裂溝の着色や粘性が触知され、または、平滑面における脱灰を疑わせる白濁や褐色斑が認められるが、エナメル質の軟化、実質欠損が確認できないものである。

小窩裂溝とは歯の噛む面の谷の最深部のことです。それはエナメル質層に口腔に開いた小さなツボ状の構造を作ることがあります。その周囲は健全なようでもツボの中がむし歯になっていることがあります。

エナメル質が唾液と接する表面ではつねに脱灰(カルシュウムが溶け出す)と再石灰化(カルシュウムが吸着する)が繰り返されています。エナメル質の脱灰がすすむとその結晶構造がくずれて曇りガラス状になり歯の表面が白濁します。

さらに脱灰がすすむとエナメル質そのものがなくなり(実質が欠損し)穴になります。いわゆる虫歯です。


歯の健康診断結果のお知らせについて

学校歯科健診の結果は「歯の健康診断結果のお知らせ」として児童生徒や父兄に報告されます。この様式や表現は学校ごとにいろいろです。おおむね「専門医(歯科医)の診断治療の対象となる病気がありますよ」という表現になっています。またその下半分は診察を受けてからどうなったか(治療がすんだ。治療中。そのまま様子をみる。相談した。などその経過)を学校に報告するための報告書になっているものが多いです。この報告書の部分は主治医(歯科医)の了解を得て父兄の方が記入して差し支えないとおもいます。医師が署名捺印すると診断書や治療証明書などと同じく公式な文書になりますので文書料が有料になるかもしれません。




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